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CFA協会ブログ

No. 571                                                                            

2022415 

Portfolio Diversification: Harder than it used to be?
ポートフォリオ分散:以前よりも難しくなっているか?

デレク・ホルストマイヤー Derek Horstmeyer

パトリック・マクマナス(Patrick McManus

アレックス・オリバー(Alex Oliver

投資運用で最も厄介な問題の1つは、投資家が最も必要なときに分散がなくなってしまうように見えることだセバスチャン・ページ、ロバートA. パナリエッロ「分散が機能しなくなるとき」

過去10年間に起こった2つの革新的な出来事は、投資家がアクセスできる証券を、世界の隅々まで著しく広範囲に拡大させてきたことです。

1に、1970年代に個人投資家向けのミューチュアルファンドが一斉に立ち上がり、いまでは数万のファンドが運用されて投資家に販売されています。1990年代初めの上場投資信託(ETF)も同様に、その流れをたどりました。

ミューチュアルファンドとETFの数が飛躍的に増加するにつれて、いくつかボタンをクリックするだけで、遠く離れた市場への投資も可能になってきました。また、新興市場からもより規模の小さいフロンティア市場などにも結び付き、投資ができるようになりました。

理論的には、世界の株式市場へのアクセスが拡大するほど、投資家はグローバル分散株式ポートフォリオを構築し、そのメリットを享受しやすくなるはずです。

しかしそれは本当でしょうか。世界の株式指数への分散投資は、本当にポートフォリオのリスク低減に効果をもたらしたのでしょうか。

その答えを探るために、数十年に遡りさまざまな株式指数からできるだけ多くのデータを収集しました(米国:S&P500種株価指数、英国:FTSE250種総合株価指数、ドイツ:DAX指数、フランス:CAC40、日本:日経平均株価、香港:ハンセン指数、中国:上海総合指数、カナダ:トロント総合指数、ブラジル:ボベスパ指数、ロシア:RTS指数、韓国:韓国総合株価指数、インド:SENSEX指数、オーストラリア:ASX指数、メキシコ:ボルサ指数)。

こうしたデータを元に、1980年代、1990年代、2000年代、2010年代における各指数間の相関関係を調査し、指数間での分散が、実際にリスク削減の点で期待した効果を生み出したのかどうか、またこうした効果が時間とともにどう変化したかを探りました。

1980年代には、データのある調査対象指数すべての間の平均相関係数が0.25でした。相関係数が最低だったのはブラジルボベスパ指数と香港ハンセン株価指数の-0.51で、最高だったのはS&P500種株価指数とFSTE250株価指数の0.83でした。1980年代はサンプルにある45の相関係数のうち、負の相関を示したのは8つでした。

各国株式指数間の相関:1980年代

さらに1990年代と2000年代になると、指数間のばらつきはその分散効果とともに著しく低下し、負の相関関係を示すものも徐々に減少しました。

各国株式指数間の相関:1990年代

各国株式指数間の相関:2000年代

1990年代には、相関係数の平均はすでに0.30に上昇していました。91ある相関係数のうち、負の相関はわずか7つでした。2000年代までに相関係数の平均は0.59に上昇し、91ある指数ペアの中で負の相関はなくなりました。

この傾向は2010年代、2020年代に入っても続きました。2020年から2022228日までの相関係数の平均は0.70で、最低の相関係数はロシア株式市場と上海総合指数の0.37でした。つまり2020年代になると、ボラティリティを抑えたい投資家が海外株式指数の中で株式配分を分散させても、その戦略は特に効果的ではなかったということです。

各国株式指数間の相関:2010年代

いったい何が起きたのでしょうか。世界中の市場が進化しており、グローバル化がその過程の中心テーマになってきました。世界が密接に絡み合い一体化する中で、株式市場間の相関関係はますます高まってきたのです。したがって遠く離れたフロンティア市場だけでなく、先進国・新興国を問わずあらゆる株式指数に投資できるようになっても、それら指数間での株式配分の分散効果は低下しているのです。

各国市場間の相関係数

1980年代はハンセン指数とボベスパ指数間で分散すれば、ポートフォリオのボラティリティを過去に比べて12ポイント削減することが可能でした。

しかし、2020年代はいまのところ、株式配分を分散させる目的で最適な指数の組み合わせを行う戦略を立てても相関係数はせいぜい0.36にまでしか得られません。これはポートフォリオのボラティリティを過去と比較して3ポイント削減するにすぎないのに、今日数々の逆風を受けているロシア株に配分しなければならないことを意味します。

もちろん、こうした株価指数の相関上昇という傾向が続くかどうかはまだわかりません。最近の世界情勢の混乱を踏まえれば、答えは恐らく「ノー」でしょう。

多くの人が、過去半世紀のグローバル化の流れはピークを打ち、後退し始めていると考えています。このシナリオでは、世界の株式指数間の相関関係は低下し、指数のパフォーマンスも乖離する可能性があります。最終的にそうなるかどうか、今後数か月から数年にわたり成り行きを見届ける必要があるでしょう。

(翻訳者:中山桂、CFA

 

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https://blogs.cfainstitute.org/investor/2022/04/11/portfolio-diversification-harder-than-it-used-to-be/

) 当記事はCFA協会(CFA Institute)のブログ記事を日本CFA協会が翻訳したものです。日本語版および英語版で内容に相違が生じている場合には、英語版の内容が優先します。記事内容は執筆者の個人的見解であり、投資助言を意図するものではありません。

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