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CFA協会ブログ

         

No.667

2024年5月17日               

クリック、いいね、シェアの力: 適切な金融コンテンツを促進する
The Power of Clicks, Likes, and Shares: Promote the Right Kind of Financial Content

アルフォンソ・リチャルデリ (Alfonso Ricciardelli)CFA

ぺドラム・パリツカリ (Pedram Parhizkari)CAIA

 

 

ファイナンスのインフルエンサー、別名フィンフルエンサーは、ソーシャルメディア上では、特に18歳から25歳のZ世代の間で絶大な支持を得ています。フィンフルエンサーの中には、ソーシャルメディアを活用して健全な金融教育を促進し、社会全体に多大な利益をもたらしている人もいます。しかし、金銭的利益やソーシャルメディアでの名声を得るため、問題のあるアドバイスを垂れ流す悪い輩もいます。

コミュニティとしての私たちの仕事は、金融教育と知識の共有に偽りのない関心を持つコンテンツのクリエイターを促進することです。これは言うは易く行うは難しです。ソーシャルメディア・プラットフォームでは、トラフィックを促進し、大量の「いいね」やシェアを引き出すために突飛な主張を声高に叫ぶフィンフルエンサーが報酬を得るからです。

最近の学術研究では、Xでの29,000件以上のツイートを分析し、一部の金融コンテンツの作成者が「ネガティブスキル」を持っていることが判明しました。こうした「反スキル」のフィンフルエンサーは、本当のスキルを有する金融コンテンツのクリエイターよりも多くのフォロワーを擁し、より大きな影響力を持っていると指摘されます。

カリフォルニア大学バークレー校、ルイジアナ州立大学、スイス・ファイナンス・インスティチュート(Swiss Finance Institute-HECローザンヌの研究によれば、「反スキル」を持つフィンフルエンサーが推奨するのとは反対の投資ポジションを取ると経済的利益が得られる可能性があると言います。彼らのアドバイスは一貫してひどく悪質であるために、逆にそれとは反対の投資をした方が利益を出せる可能性があるのです。

この研究者らによると、フィンフルエンサーの内、28%はファイナンスのスキルを有しており毎月2.6%の超過リターンを生み出しています。フィンフルエンサーの16%はそうしたスキルが低く、56% は「反スキル」しかなく、月次の超過リターンは-2.3%です。

また、ソーシャルメディアのユーザーは、投稿を通じて示されるファイナンスに関する見識ではなく、行動バイアスによってフィンフルエンサーをフォローすることが多いと結論付けています。つまり、自らが既に信じることや自らの行動特性と一致するアドバイスに従う傾向があるということです。こうした悪い輩が投資家に損害を与え、市場の機能を歪める可能性があるとも警告しています。

 

インフルエンサー、知識のシェア、思想的リーダー

しかしながら、ソーシャルメディア上のすべての金融コンテンツのクリエイターは同等に情報を発信しているわけではありません。インフルエンサー、知識のシェアをする人、思想的リーダーを目指す人の間には、大きな違いが見られます。

インフルエンサーの目標は、フォロワーを獲得し、彼らのような支援者から収益を生み出すことです。インフルエンサーは、自分のコンテンツが人気を得、共有され、関心を集められるよう、「より素早く広まること(バイラル)」を絶えず目指しています。

一方、知識のシェアを目指す人は、他の人を教育することを目的として具体的な知識を世に広めていく人です。知識のシェアは、オンラインクラス、書籍販売、ニュースレターの購読を通じて、その取り組みを収益化しようとする場合があります。

モハメド・エラリアン(Mohamed El-Erianのようなファイナンスの専門家は、リンクドイン(LinkedIn)を活用して自らの思想的なリーダーシップを誇示しています。若い専門家も同様に、キャリア向上を目指し、質の高い教育コンテンツを作成しています。イグナシオ・ラミレス・モレノ(Ignacio Ramirez Moreno)のように、CFA 協会リサーチ・ポリシー・センターCFA Research and Policy Centerと協力、ソーシャル メディアで正しい金融コンテンツを宣伝することの重要性を強調している人もいます。

ユーザーを引き付ける能力は、ソーシャルメディアを使用する人すべてにとっての目標ですが、ペテン師ほど露出度が高くなる傾向があります。これは直感的にわかると思います。つまり、ソーシャルメディアのアルゴリズムでは、騒々しい書き込みやありもしない約束ごとのような宣伝をすると、その投稿がクリックされ、「いいね」を獲得してシェアされるため、非常に有利になるからです。

こうした傾向は、暗号通貨の分野でその極みを見ることができます。知識、専門性、資格を持たないインフルエンサーの多くが、投資推奨するだけでなく、暗号通貨「プロジェクト」を立ち上げることさえあります。そのいくつかは「新たなテクノロジー」と銘打ったポンジスキームにすぎず、その支持者が「インフルエンサー」の持つ信頼感を利用して、新たに鋳造されたコインの「価格を吊り上げて売り逃げする」することを可能にします。彼らは株式市場を「相場操縦」して、信じ難いほどの利益を達成するスキームを売り込むことで信者を獲得しているのです。

一方、知識のシェアで人気のある人は、パワーポイントでプレゼンテーションを作成するなどのスキルを教え、楽しませながら役立つことでフォロワーを獲得しています。

危険なのは、誤解を招くことの多い不適切な情報によって、本当の金融教育や知識が埋もれてしまうことです。

 

知識をシェアするための空間を創造する

金融教育は、ソーシャルメディアが社会全体に多大な利益をもたらす可能性のある分野です。しかし、これは、ユーザー教育に対し偽りのない関心を持って知識のシェアをする人が評価され、広く認められてこそ実現可能です。そのためには、私たちがそうしたコンテンツをクリックして「いいね」を押してシェアし、反対に、誇張された主張を流すコンテンツの作成者を無視する必要があります。

洞察力ある教育者とやかましいペテン師を見分けるために最も重要なのは、情報を評価する能力を持つことです。ソーシャルメディアの成功にはエンゲージメントと好感度が鍵となりますが、洞察力に優れた教育者に見られる傾向は、透明性があり、その意見に根拠があることです。

ソーシャルメディアは、搾取したり、誤った情報を広めたりするのではなく、金融リテラシーを向上させる強力なツールとして機能し、投資知識へのアクセスを民主化することができます。多分、教育だけを目的とした新しいプラットフォームを構築し立ち上げることが解決策なのでしょうか?

 

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執筆者

Alfonso Ricciardelli, CFA

Pedram Parhizkari, CAIA

(翻訳者:瀧澤 創、CFA

 

英文オリジナル記事はこちら

https://blogs.cfainstitute.org/investor/2024/05/16/the-power-of-clicks-likes-and-shares-promote-the-right-kind-of-financial-content/

 

) 当記事はCFA協会(CFA Institute)のブログ記事を日本CFA協会が翻訳したものです。日本語版および英語版で内容に相違が生じている場合には、英語版の内容が優先します。記事内容は執筆者の個人的見解であり、投資助言を意図するものではありません。

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